令和2年7月豪雨の被災者である相続人の方々へ 政令により延長された相続放棄等の熟慮期間は令和3年3月31日までです

特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律に基づき、令和2年7月豪雨を同法第2条第1項の特定非常災害に指定すること等を内容とする「令和2年7月豪雨による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」(以下「政令」といいます。)が令和2年7月14日に公布、施行されました。これにより、令和2年7月豪雨による災害の発生日である令和2年7月3日において、令和2年7月豪雨に際し災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された同法第2条に規定する災害発生市町村の区域(以下「対象区域」という。)に住所を有していた相続人について、熟慮期間(相続の承認又は放棄をすべき期間)を令和3年3月31日まで延長することになります。政令の詳細については、防災情報のページ(内閣府)を御覧下さい。
以下では、政令のうち、相続放棄等の熟慮期間の特例に関する措置(以下「本特例」といいます。)について御説明します。なお、政令で延長された熟慮期間は、令和3年3月31日で満了しますので、御注意下さい

Q1 「相続の放棄」や「限定承認」、「熟慮期間」とは、どのようなものですか。


ある方(被相続人)が亡くなると、その相続人は、被相続人の一切の財産を受け継ぐ(相続する)ことになりますので、被相続人が借金等の債務を負っていた場合には、相続人は、その債務も引き継ぐことになります。
相続人が被相続人の借金等の債務を引き継ぎたくないときは、相続放棄(民法第938条)をすることにより、その債務を引き継がないことができます。ただし、相続放棄をすると、被相続人の債務だけでなく、被相続人が有していた財産(土地や預貯金等の権利)も引き継がないことになります。
被相続人の借金などがどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等には、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を引き継ぐことができ、これを限定承認(民法第922条)といいます。
相続人が相続放棄及び限定承認をする場合には、原則として、「自己のために相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったこと)を知った時」から3か月以内に家庭裁判所でその旨を申述しなければならないとされており(民法第915条第1項)、この期間を熟慮期間といいます。

Q2 今回の熟慮期間の特例とは、どのようなものですか。


Q1の熟慮期間の終期が令和2年7月3日以降の日となる場合は、その終期を年令和3年3月31日まで延長するというものです。
例えば、相続人の方が、令和2年6月1日に自己のために相続の開始があったことを知った場合、通常の熟慮期間の終期は同年9月1日となりますが、今回の特例の対象となる相続人の方については、この特例により、その終期が令和3年3月31日となり、同日までに相続放棄や限定承認の申述をすればよいことになります。

Q3 対象となる人は、どのような人ですか。


本特例の対象となる方は、令和2年7月豪雨による災害が発生した令和2年7月3日に、令和2年7月豪雨に際し災害救助法が適用された同法第2条に規定する災害発生市町村の区域(対象区域)に住所を有していた相続人です
対象区域については、災害救助法の適用状況(内閣府防災情報のページ)を御覧ください。

Q4 対象区域に住民票がなければ、本特例の適用を受けられないのですか。


令和2年7月3日に対象区域に住所を有していたかどうかは、家庭裁判所が、住民票、勤務証明書、在学証明書、公共料金の支払に関する記録などの各種の資料に基づいて、その生活の本拠が対象区域にあったかどうかで判断することになります。
したがって、住民票がなければ、本特例の適用が受けられないというわけではありません。

Q5 令和2年7月4日以降に対象区域に住むことになったのですが、本特例の適用を受けることができますか。


令和2年7月3日時点で対象区域に住所を有しておらず、同月4日以降に対象区域に住所を有することになった相続人には、本特例は適用されません。もっとも、それらの方の熟慮期間を家庭裁判所が更に伸長することを否定するものではありません。したがって、同月4日以降に対象区域に住むことになった方であっても、親族が亡くなったにもかかわらず、熟慮期間内に相続の承認又は放棄をすることができない場合には、この期間を延長するため、家庭裁判所に申立てをすることができます。手続の詳細については、最高裁判所のウェブサイトを御覧ください。なお、申立ては、必要書類を郵送することによってもできます。

Q6 本特例は、亡くなった方(被相続人)が被災者である場合や、相続の対象となる財産が対象区域にある場合にも、適用されますか。


本特例が適用されるためには、相続人が令和2年7月3日(令和2年7月豪雨による災害の発生日)に対象区域に住所を有していたことが必要です。被相続人が被災者であるか否か、相続の対象となる財産が対象区域にあるか否かは、関係がありません。
したがって、相続の対象となる財産が対象区域以外にある場合であっても、相続人が令和2年7月3日に対象区域に住所を有していれば、本特例が適用されます。

Q7 相続人が未成年者や成年被後見人である場合には、どうなりますか。


相続人が未成年者又は成年被後見人である場合には、その熟慮期間は、民法により、未成年者又は成年被後見人ご本人ではなく、その法定代理人(例えば、親権者や後見人)を基準に考えることになります。
そこで、相続人が未成年者又は成年被後見人である場合に、本特例により熟慮期間が延長されるかどうかは、未成年者又は成年被後見人ご本人ではなく、その法定代理人が令和2年7月豪雨の発生日において対象区域に住所を有していたかどうかによって判断され、法定代理人が令和2年7月3日に対象区域に住所を有していた場合には、本特例が適用されます。

Q8 祖父が令和2年7月豪雨で亡くなり、次いで、その相続人である父がその相続について承認又は放棄をせずに亡くなりました。その場合、この父の相続人である息子にも、本特例が適用されますか。


被相続人(祖父)が亡くなり、次いで、その相続人(父)が亡くなった場合には、祖父と父との間の相続についての息子の持つ熟慮期間は、民法により、息子を基準にして考えることになります。
そこで、祖父と父との間の相続についての息子の持つ熟慮期間が延長されるかどうかは、息子が令和2年7月豪雨による災害の発生日に対象区域に住所を有していたかどうかによって判断されることになり、息子が令和2年7月3日に対象区域に住所を有していた場合には、本特例が適用されます。

Q9 相続人が複数いる場合に、その一部の方だけが令和2年7月3日に対象区域に住んでいたときは、相続人全員について熟慮期間が延長されますか。


熟慮期間は、民法上、それぞれの相続人ごとに、自己のために相続の開始があったことを知った時から進行します。したがって、相続人が複数いる場合には、これらの相続人のうち、令和2年7月3日に対象区域に住所を有していた方だけに、本特例が適用されます。

Q10 令和3年3月31日までに相続の放棄や限定承認をするかどうかを決めることができないときは、どうすればよいですか。


政令は、民法の規定による3か月の熟慮期間を令和3年3月31日まで延長するものですが、その期間を家庭裁判所が更に伸長することを否定するものではありません。したがって、令和3年3月31日までになお相続の放棄や限定承認をするかどうかを決めることができないときは、同日までに家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申立てをすることが必要です。手続の詳細は、Q5と同じです。

Q11 相続放棄の期間の伸長の申立てをしないまま令和3年3月31日が経過した場合、どうなりますか。


令和3年3月31日までに(熟慮期間が同日より後に満了する場合はその日までに)相続放棄又は限定承認をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます。すなわち、被相続人の財産と借金等の債務を全て引き継ぐことになります。

Q12 相続について、問合せをしたいのですが、どうしたらいいですか。


相続に関する法制度等については、法テラス(日本司法支援センター)・被災者専用フリーダイヤルへお問い合わせください。
問い合わせ先:0120-078309
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土曜9:00~17:00
申立て等の裁判所の手続については、家庭裁判所の家事手続案内を御利用ください。